保険給付③


死亡に関する保険給付を見ていこう。

遺族(補償)等年金

受給資格者及び受給権者

遺族(補償)等年金の受給権者(条文では「遺族(補償)等年金を受ける権利を有する遺族」)となるのは、次の受給資格者(条文では「遺族(補償)等年金を受けることができる遺族」)のうちの最先順位者である。

全て共通の要件: 労働者の収入によって生計を維持していたこと

順位 遺族 労働者の死亡の当時の要件
1 配偶者(妻)
配偶者(夫) 60歳以上又は厚生労働省令で定める障害の状態(以下「障害の状態」)にあること
2 18歳に達する日以後最後の3月31日(「18歳の年度末」)までの間にあるか又は障害の状態にあること
3 父母 60歳以上又は障害の状態にあること
4 18歳の年度末までの間にあるか又は障害の状態にあること
5 祖父母 60歳以上又は障害の状態にあること
6 兄弟姉妹 18歳の年度末までの間にあるか又は60歳以上又は障害の状態にあること
7 55歳以上60歳未満の者で障害の状態にないものであること
8 父母 7と同じ
9 祖父母 7と同じ
10 兄弟姉妹 7と同じ

配偶者(妻又は夫)には、「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者(内縁関係の者)」が含まれる。

ただし、届出による婚姻関係にある(戸籍上の)配偶者と事実上の婚姻関係にある(内縁の)配偶者がいる重婚的内縁関係の場合は、前者の婚姻関係がその実態を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みがない場合には後者が配偶者とされるが、それ以外の場合には前者が配偶者とされる。

上記7-10の順位の者(「若年停止者」)は、受給権者となっても、60歳に達する月までの間は、支給停止される。

「生計を維持していた」とは、もっぱら又は主として労働者の収入によって生計を維持されていることを要せず、労働者の収入によって生計の一部を維持されていれば足りる。したがって、いわゆる共稼ぎもこれに含まれる。

胎児出生の場合の取扱い

「労働者の死亡の当時胎児であった子が出生したときは、受給資格者の規定の適用については、将来に向かって、その子は、労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子とみなす。」

出生したときに受給資格が発生するのであって、労働者の死亡時にさかのぼって発生するのではない。

年金額

遺族(補償)等年金の額は、受給権者及びその者と生計を同じくしている受給資格者(若年停止者を除く)の人数の区分に応じ、次の額とされている。

遺族の数 遺族(補償)等年金の額
1人 給付基礎日額の153日分. ただし、55歳以上又は障害の状態にあるにあっては、給付基礎日額の175日分
2人 給付基礎日額の201日分
3人 給付基礎日額の223日分
4人 給付基礎日額の245日分

遺族(補償)等年金を受けている者が老齢厚生年金を受けるようになっても年金額は減額されない。

年金額の改定

遺族(補償)等年金の額の算定の基礎となる遺族の数に増減を生じたときなど、年金額の改定事由が生じたときは、その改定事由が生じた月の翌月から、遺族(補償)等年金の額が改定される。

所在不明による支給停止

「遺族(補償)等年金を受ける権利を有する者の所在が1年以上明らかでない場合には、当該遺族(補償)等年金は、同順位者があるときは同順位者の、同順位者がないときは次順位者の申請によって、その所在が明らかでない間、その支給を停止する。

この場合において、同順位者がないときは、その間、次順位者を先順位者とする。この規定により遺族(補償)等年金の支給を停止された遺族は、いつでも、その支給の停止の解除を申請することができる。」

失権及び失格

遺族(補償)等年金の受給権者又は受給資格者が次の1-6のいずれかに該当するに至ったときは、受給権者の場合はその受給権が消滅し(失権)、受給資格者の場合はその受給資格が消滅する(失格)。

  1. 死亡したとき
  2. 婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む)をしたとき
  3. 直系血族又は直系姻族以外の者の養子(届出をしていないが事実上養子縁組関係と同様の事情にある者を含む)となったとき
  4. 離縁(養子縁組の解消)によって、死亡した労働者との親族関係が終了したとき
  5. 子、孫又は兄弟姉妹については、18歳の年度末が終了したとき(労働者の死亡の時から引き続き障害の状態にあるときを除く)
  6. 障害の状態にある夫、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、その事情がなくなったとき(夫、父母又は祖父母については、労働者の死亡の当時60歳以上であったとき、子又は孫については、18歳の年度末までの間にあるとき、兄弟姉妹については、18歳の年度末までの間にあるか又は労働者の死亡の当時60歳以上であったときを除く)

なお、受給権者が失権した場合において、同順位者がなくて後順位者があるときは、次順位者に遺族(補償)等年金が支給され、これを「転給」という。

受給権者(受給資格者)は、自己又は自己の配偶者の父母や祖父母など(直系親族)の養子になっても失権(失格)しないが、自己又は自己の配偶者の叔父や叔母など(傍系親族)の養子になると失権(失格)する。

遺族(補償)等年金前払一時金

「政府は、当分の間、労働者が業務上の自由、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要員とする事由又は通勤により死亡した場合における当該死亡に関しては、遺族(補償)等年金を受ける権利を有する遺族に対し、その請求に基づき、保険給付として、遺族(補償)等年金前払一時金を支給する。」

若年支給停止者であっても、遺族(補償)等年金前払一時金の請求ができる。

支給額

遺族(補償)等年金前払一時金の額は、給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分又は1,000日分に相当する額から、受給権者が選択した額となる。

請求

「遺族(補償)等年金前払一時金の請求は、同一の事由に関し、1回に限り行うことができる。遺族(補償)等年金前払一時金の請求は、遺族(補償)等年金の請求と同時に行わなければならない。ただし、遺族(補償)等年金の支給の決定の通知のあった日の翌日から起算して1年を経過する日までの間は、遺族(補償)等年金を請求した後においても遺族(補償)等年金前払一時金を請求することができる。」

したがって、当該前払一時金の請求も、遅くとも、遺族(補償)等年金の支給決定通知日の翌日から起算して1年以内に行わなければならない。

先順位者が前払一時金を受給した後に失権した場合には、転給による受給権者は前払一時金の請求をすることができない。

遺族(補償)等一時金

支給要件及び支給額

遺族(補償)等一時金は、次の場合に、次の額が支給される。

支給要件 支給額
労働者の死亡の当時に遺族(補償)等年金の受給資格者がないとき 給付基礎日額の1,000日分
遺族(補償)等年金の受給権者の権利が消滅した場合において、他に当該遺族(補償)等年金の受給資格者がなく、かつ、当該労働者の死亡に関し支給された遺族(補償)等年金の額及び遺族(補償)等年金前払一時金の額の合計額が給付基礎日額の1,000日分に満たないとき 給付基礎日額の1,000日分から既に支給された遺族(補償)等年金の額及び遺族(補償)等年金前払一時金の額を所定の方法により合計した額を控除した額

給付基礎日額の1,000日分の遺族(補償)等年金前払一時金が支給された場合には、遺族(補償)等一時金は支給されない。

受給権者

遺族(補償)等一時金の受給権者となるのは、次の受給資格者のうちの最先順位者(1-4の順序で、1-4の中では掲げた順序による者)。

  1. 配偶者
  2. 労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子、父母、孫及び祖父母
  3. 労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していなかった子、父母、孫及び祖父母
  4. 兄弟姉妹

①遺族(補償)等年金を受けるためには、必ず「生計維持関係」が要求されるが、遺族(補償)等一時金を受けるためには、「生計維持関係」は必ずしも要求されない。 ②遺族(補償)等年金の受給権を失った者であっても、遺族(補償)等一時金の受給権者になることはある。

葬祭料等(葬祭給付)

支給要件

「葬祭料等(葬祭給付)は、労働者が業務上の事由、複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により死亡した場合に、葬祭を行う者に対し、その請求に基づいて支給する。」

なお「葬祭を行う者」とは、一般的には遺族となる。ただし、葬祭を行う遺族がいない場合に、社葬として会社において葬祭を行ったようなときは、当該会社となる。

支給額

「葬祭料等(葬祭給付)の額は、315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額(その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合には、給付基礎日額の60日分)とする。」

二次健康診断等給付

支給要件

二次健康診断等給付は、労働安全衛生法の規定による一般健康診断等のうち、直近のもの(「一次健康診断」)において、血圧検査、血液検査その他業務上の事由による脳血管疾患及び心臓疾患の発生にかかわる身体の状態に関する検査であって、厚生労働省令で定めるものが行われた場合において、当該検査を受けた労働者がそのいずれの項目にも異常の所見があると診断されたときに、当該労働者(当該一次健康診断の結果その他の事情により既に脳血管疾患又は心臓疾患の症状を有すると認められるものを除く)にたいし、その請求に基づいて行う。」

給付の範囲

二次健康診断等給付の範囲は次の通りとされる。

①二次健康診断

脳血管及び心臓の状態を把握するために必要な検査であって一定のものを行う医師による健康診断(1年度につき1回に限る)

②特定保健指導

二次健康診断の結果に基づき、脳血管疾患及び心臓疾患の発生の予防を図るため、面接により行われる医師又は保健師による保健指導(①栄養指導②運動指導③生活指導)(二次健康診断ごとに1回に限る)

一次健康診断の結果その他の事情により既に脳血管疾患又は心臓疾患の症状を有すると認められる労働者については、二次健康診断等給付は行われず、また、二次健康診断の結果その他の事情により既に脳血管疾患又は心臓疾患の症状を有すると認められる労働者については、当該二次健康診断に係る特定保健指導は行われない。

受給手続

二次健康診断等給付は、社会復帰促進事業として設置された病院若しくは診療所又は都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所(「健診給付病院等」)において現物給付により行われる。

そして、二次健康診断等給付を受けようとする者は、所定の事項を記載した請求書を、健診給付病院等を経由して所轄都道府県労働局長に提出しなければならない。

ミニテスト

0/10問回答済み
Q1. 遺族(補償)等年金について、労働者の死亡の当時における受給資格者の要件として正しいものはどれか。
Q2. 遺族(補償)等年金の受給資格者について、「子」が受給資格者となるための年齢要件として正しいものはどれか。
Q3. 重婚的内縁関係の場合における配偶者の取扱いについて正しいものはどれか。
Q4. 遺族(補償)等年金の年金額について、遺族の数が1人の場合で、55歳以上の妻又は障害の状態にある妻に支給される額として正しいものはどれか。
Q5. 遺族(補償)等年金の額の改定について正しいものはどれか。
Q6. 遺族(補償)等年金の受給権者の所在不明による支給停止について正しいものはどれか。
Q7. 遺族(補償)等年金前払一時金の支給額として、受給権者が選択できる額に含まれないものはどれか。
Q8. 遺族(補償)等年金前払一時金の請求期限について正しいものはどれか。
Q9. 葬祭料等(葬祭給付)の支給額について正しいものはどれか。
Q10. 二次健康診断等給付について正しいものはどれか。