健康診断
一般の労働者についての健康診断は、血圧の測定、胸部X線検査などの11の検査項目(一般項目)について行う。この一般項目について行われる健康診断のことを「一般健康診断」と呼ぶ。
この「一般健康診断」には「雇入れ時の健康診断」「定期健康診断」のほか、深夜業などの特定業務に従事している人について行われる「特定業務従事者の健康診断」や海外派遣の前後に行われる「海外派遣労働者の健康診断」があるが、これらに「給食従業員の健康診断(検便)」も含めて「一般健康診断」と呼ぶこともある。
また、一定の有害業務に従事している労働者等に対して行われる特別の項目についての健康診断や歯科医師による健康診断(「特殊健康診断」)、臨時健康診断等のその他の健康診断が定められている。
一般健康診断
「事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、一般項目(喀痰検査を除く)について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、3月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない(省略することができる)。」
パートタイム労働については、1週間の所定労働時間が当該事業場の同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3以上である場合には、「常時使用する労働者」に該当する。
雇入れ時の健康診断の検査項目は、次の「定期健康診断」で示す「一般項目」から、「喀痰検査」を除いたものとなる。
一般健康診断後の再検査や精密検査についてまで、その実施義務が事業者に課せられているのではない。
定期健康診断
「事業者は、常時使用する労働者(特定業務従事者を除く)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、一般項目について医師による健康診断を行わなければならない。」
定期健康診断の対象となるのも、常時使用する労働者であるが、このうち特定業務従事者は「特定業務従事者の健康診断」を受けるため、対象者から除かれる。
定期健康診断は、雇入れ時の健康診断(書面を提出した者も含む)、海外派遣労働者の健康診断又は後記の有害業務従事中の特殊健康診断を受けた者については、当該健康診断の実施の日から1年間に限り、その者が受けた当該健康診断の項目に相当する項目を省略して行うことができる。
**定期健康診断の検査項目(一般項目): **
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
- 胸部X線検査及び喀痰検査
- 血圧の測定
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 尿検査
- 心電図検査
特定業務従事者の健康診断
「事業者は、特定業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び6月以内ごとに1回、定期に、一般項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、『胸部X線検査及び喀痰検査』については、1年以内ごとに1回、定期に、行えば足りるものとする。」
なお、「特定業務」とは、その業務が常時500人以上の労働者を従事させる場合に産業医の専属が義務付けられる有害業務のことをいう。
検査項目は、定期健康診断の検査項目と同じ一般項目になる。
海外派遣労働者の健康診断
「事業者は、労働者を本邦外の地域に6月以上派遣しようとするときは、あらかじめ、当該労働者に対し、一般項目及び厚生労働大臣が定める項目のうち石が必要であると認める項目について、医師による健康診断を行わなければならない。」
「事業者は、本邦外の地域に6月以上派遣した労働者を本邦の地域内における業務に就かせるとき(一時的に就かせるときを除く)は、当該労働者に対し、一般項目及び厚生労働大臣が定める項目のうち医師が必要であると認める項目について、医師による健康診断を行わなければならない。」
給食従業員の健康診断
「事業者は、事業に附属する食堂又は炊事場における給食の業務に従事する労働者に対し、その雇入れの際又は当該業務への配置替えの際、検便による健康診断を行わなければならない。」
特殊健康診断
有害業務従事中の健康診断
事業者は、一定の有害業務(令22条1項の業務)に常時従事する労働者に対し、その業務の区分に応じ、雇入れ又は当該業務への配置替えの際及びその後所定の期間(通常は6月)以内ごとに1回、定期に、医師による特別の項目についての健康診断を行わなければならない。
有害業務従事後の健康診断
事業者は、一定の有害業務(令22条2項の業務)に常時従事させたことのある労働者で、現に使用しているものに対しては、労働者が常時従事した業務の区分に応じ、6月以内ごとに1回(一定の項目については1年以内ごとに1回)、定期に、医師による特別の項目についての健康診断を行わなければならない。
歯科医師による健康診断
事業者は、歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉塵を発散する場所における業務に常時従事する労働者に対し、その雇入れの際、当該業務への配置替えの際及び当該業務についた後6月以内ごとに1回、定期に、歯科医師による健康診断を行わなければならない。
派遣労働者については、一般健康診断は派遣元の事業者が、特殊健康診断は原則として派遣先の事業者が、それぞれ行わなければならない。
その他の健康診断
臨時健康診断
「都道府県労働局長は、労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、労働衛生指導医の意見に基づき、事業者に対し、臨時の健康診断の実施その他必要な事項を指示することができる。」
労働者指定医師による健康診断
労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行う健康診断を受けることを希望しない場合、他の医師又は歯科医師の行うこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
自発的健康診断
「深夜業に従事する労働者であって、常時使用され、自ら受けた健康診断を受けた日前6月間を平均して1月当たり4回以上深夜業に従事したものは、自ら受けた健康診断の結果を証明する書面を事業者に提出することができる。」
ただし、この証明書の提出は、当該健康診断を受けた日から3月を経過する前に行わなければならない。
健康診断実施後の措置等
事業者は、健康診断の項目に「異常の所見」があると診断された労働者については、医師等の「意見」を聴き、これを勘案して、必要に応じ、就業場所の変更、作業の転換などの「適切な措置」を講じなければならない。また、一般健康診断の結果、「特に健康の保持に努める」必要があると認める労働者に対しては、「保健指導」を行うように努めなければならない。
就業場所変更等の措置
「事業者は、健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師又は歯科医師の意見を聞かなければならない。」
なお、事業者は、医師又は歯科医師から、意見聴取を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を求められたときは、速やかにこれを提供しなければならない。
「事業者は、この医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、当該医師又は歯科医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会への報告その他の適切な措置を講じなければならない。」
保健指導等
「事業者は、健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該健康診断の結果を通知しなければならない。」
「事業者は、一般健康診断又は自発的健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師又は保健師による保健指導を行うように努めなければならない。」
一方で「労働者は、通知された健康診断の結果及び保健指導を利用して、その健康の保持に努めるものとする。」
定期健康診断結果報告
「常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期健康診断又は特殊業務従事者の健康診断(定期のものに限る)を行ったときは、遅滞なく、電子情報処理組織を使用して、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。」
なお、特殊健康診断(有害業務従事中・後の健康診断、歯科医師による健康診断)のうち定期のものを実施したときは、当該業務に従事する労働者の人数にかかわらず、報告することが義務付けられている。