機械等並びに危険物及び有害物に関する規制
特定機械など
労働安全衛生法は、危険有害な作業を必要とする機械、器具その他の設備(機械等)に対しては、単に使用中の規制をしているだけでなく、それ以前の製造・流通の段階を含めて規制をしている。このような機械等のうち、特に危険な作業を必要とする機械のことを「特定機械等」と言い、最も強い規制の対象とされている。
特定機械等の規制の概要を(固定式)クレーン・移動式クレーンで例示すると、まず、その製造にあたっては、あらかじめ「都道府県労働局長の許可」を受けなければならない。
次に、移動式クレーンの場合には、製造した時(又はそれに準ずる事由発生時)に「登録設計審査等機関の検査」を、(固定式)クレーンの場合には、設置する時(又はそれに準ずる事由発生時)に「労働基準監督署長の検査」を、それぞれ受けなければならない。これらの検査に合格した(固定式)クレーン・移動式クレーンにはそれぞれ検査証が交付(又は裏書)される。
そして、検査証には、有効期間が定められているため、この後は、「性能検査」を受け、これを更新することにより、構造劣化・安全機能低下等の有無をチェックしていく。
製造の許可
「特に危険な作業を必要とする機械等として掲げるもので、政令で定めるもの(特定機械等)を製造しようとする者は、あらかじめ、都道府県労働局長の許可を受けなければならない。」
「都道府県労働局長は、許可の申請があった場合には、その申請を審査し、申請にかかる特定機械等の構造等が厚生労働大臣の定める基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。」
許可の申請は、特定機械等(の種類)ごとに厚生労働大臣の登録を受けた者(「登録設計審査等機関」)が行なった設計審査の結果を記載した書類を添付して行わなければならない。ただし一定の場合において、都道府県労働局長が当該申請に係る特定機械等の設計審査の業務を行うときは、この限りではない。
都道府県労働局長等の検査
特定機械等のうちボイラー、第1種圧力容器、移動式クレーン及びゴンドラは、とりわけ危険のため、次の場合に、登録設計審査等機関の製造時等検査を受けなければならない。
- 製造したとき
- 輸入したとき
- 厚生労働省令で定める期間設置されなかったものを設置しようとするとき
- 使用を廃止したものを再び設置し、又は使用しようとするとき
登録設計審査等機関は、製造時等検査に合格した特定機械等のうち、移動式のものについてのみ、検査証を交付する。固定式のものについては、据付という意味での「設置」を伴うため、この「設置」が終了し、労働基準監督署長の検査に合格した段階で、検査証が交付される。
労働基準監督署長の検査
次の場合には、労働基準監督署長の検査を受けなければならない。
- 特定機械等(移動式のものを除く)を設置したとき
- 特定機械等の主要構造部分に変更を加えたとき
- 特定機械等(建設用リフトを除く)で使用を休止したものを再び使用しようとするとき
上記検査に合格した場合、検査証については、次のような扱いとなる。
- 設置に係る検査(落成検査)に合格した特定機械等については、この段階で、労働基準監督署長が、検査証を交付する
- 変更又は再使用に係る検査(変更検査又は使用再開検査)に合格した特定機械等については、すでに検査証が交付されているので、労働基準監督署長は、当該特定機械等の検査証に裏書を行う
検査証を受けていない特定機械等は、使用してはならない。検査賞を受けた特定機械等は、検査証とともにするのでなければ、譲渡し、又は貸与してはならない。
性能検査
「検査証の有効期間の更新を受けようとする者は、当該特定機械等及びこれに係る一定事項について、厚生労働大臣の登録を受けた者(「登録性能検査機関」)が行う性能検査を受けなければならない。」
建設王リフトは、検査証の有効期間が設置から廃止までであるため、性能検査を受ける必要がない(建設用リフトは落成検査と変更検査しか行われない)。
第42条の機械等
特定機械等以外の機械等で、特定機械等ほどの危険性はないものの、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するものも規制の対象となる。
これらの機械等(第42条の機械等)については、まず「厚生労働大臣が定める規格又は安全装置(規格等)」を具備しなければならず、これを具備しなければ「譲渡等が禁止」される。この機械等のうち、重大災害に直結するようなものを製造・輸入した場合は、機械等を個々に検定する「個別検定」又はサンプル抽出したものを検定する「型式検定」を受けなければならない。規格等の具備が確認できないものを譲渡等した者に対しては、「回収等の命令」が出される。
譲渡等の制限
第42条の機械等は、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならない。
動力により駆動される機械等で、作動部分上の突起物又は動力電動部分若しくは調速部分に厚生労働省令で定める防護のための措置が施されていないものは、譲渡し、貸与し、又は譲渡若しくは貸与の目的で展示してはならない。
個別検定
「第42条の機械等(型式検定)を受けるべき機械等を除く)のうち、法別表第3に掲げる機械等で政令で定めるものを製造し、又は輸入した者は、厚生労働大臣の登録を受けた者(「登録個別検定機関」)が個々に行う当該機械等についての検定(「個別検定」)を受けなければならない。」
「個別検定を受けたものは、当該個別検定に合格した機械等に、当該個別検定に合格した旨の表示を付さなければならない。」具体的には、機械等の見やすい箇所に、個別検定合格標章を付すか、高温となる機械等については刻印を押すか又は刻印を押した銘板を取り付ける。
型式検定
「第42条の機械等のうち、法別表第4に掲げる機械等で政令で定めるものを製造し、又は輸入した者は、厚生労働大臣の登録を受けた者(「登録型式検定機関」)が行う当該機械等の型式についての検定(「型式検定」)を受けなければならない。」
「型式検定を受けた者は、当該型式検定に合格した型式の機械等を本邦において製造し、又は本邦に{[輸入}}したときは、当該機械等に、型式検定に合格した型式の機械等である旨の表示を付さなければならない。」具体的には、機械等の見やすい箇所に型式検定合格標章を付す。
「登録型式検定機関は、型式検定に合格した型式について、型式検定合格証を申請者に交付する。型式検定合格証の有効期間の更新を受けようとする者は、型式検定(更新検定)を受けなければならない。」
回収等の命令
厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、第42条の機械等を製造し、又は輸入した者が、当該機械等で、規格等を具備していると認められないものを譲渡し、又は貸与した場合には、その者にたいし、当該機械等への回収又は改善を図ること、当該機械等を使用している者へ一定事項を通知することその他当該機械等が使用されることによる労働災害を防止するため必要な措置を講ずることを命ずることができる。
定期自主検査
「事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定める者について、定期に自主検査を行い、及びその結果を記録しておかなければならない。」
「事業者は、定期自主検査のうち特定自主検査を行うときは、当該事業者(事業者が法人である場合には、その代表者又は役員)で厚生労働省令で定める資格を有するものが自ら実施し、又はその使用する労働者で当該厚生労働省令で定める資格を有するもの若しくは検査業者に実施させなければならない。」
特定機械等は、特定自主検査の対象とはされていない。
危険・有害物
製造等禁止物質
「黄りんマッチ、ベンジジン、ベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずる物で、政令で定めるものは、製造し、輸入し、譲渡し、提供し、又は使用してはならない。」
製造等の禁止の対象となっている物質でも、次の要件を満たしたときには「試験研究のため製造し、輸入し、又は使用する」ことができる。
- 製造、輸入又は使用について、あらかじめ、所轄都道府県労働局長の許可を受けること
- 厚生労働大臣が定める基準に従って製造し、又は使用すること
製造許可物質
「ジクロルベンジジン、ジクロルベンジジンを含有する製剤そよ他の労働者に重度の健康障害を生ずるおそれのある物で、政令で定めるものを製造しようとする者は、あらかじめ、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。」
製造等禁止物質の製造等を許可するのは都道府県労働局長であり、製造許可物質の製造を許可するのは厚生労働大臣である。
表示対象物
「爆発性の物、発火性の物、引火性の物その他の労働者に危険を生ずるおそれのある物若しくはベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は上記「製造許可物質」を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、その容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供するときにあっては、その容器)に次に掲げる事項を表示しなければならない。ただし、その容器又は包装のうち、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについては、この限りでない。」
- 名称
- 人体に及ぼす作用
- 貯蔵又は取扱い上の注意
- 安定性及び反応性
- 注意喚起語
- 当該物を取り扱う労働者に注意を喚起するための標章で厚生労働大臣が定めるもの
- 表示をする者の氏名(法人にあっては、その名称)、住所及び電話番号
パイプラインで送る場合のように、上記危険・有害物を容器又は包装を用いないで譲渡又は提供する場合には、所定の事項を記載した文書を、譲渡し、又は提供する相手方に交付しなければならない。
容器に入れ、かつ、包装して譲渡又は提供する場合は、容器の方に表示しなければならない。
通知対象物
「労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの又は前期の「製造許可物質」(「通知対象物」)を譲渡し、又は提供する者(「通知対象物譲渡者等」)は、文書の交付その他所定の方法により通知対象物に関する次に掲げる事項を、譲渡し、又は提供する相手方に通知しなければならない。ただし、主として一般消費者の生活の用に供される製品として通知対象物を譲渡し、又は提供する場合については、この限りでない。」
- 名称
- 人体に及ぼす作用
- 貯蔵又は取扱い上の注意
- 安定性及び反応性
- 成分及びその含有量
- 物理的及び化学的性質
- 流出その他の事故が発生した場合において講ずべき応急の措置
- 危険性又は有害性の要約
- 想定される用途及び当該用途における使用上の注意
- 適用される法令
- その他参考となる事項
- 通知を行う者の氏名(法人にあっては、その名称)、住所及び電話番号
通知対象物譲渡者等は、通知した事項に変更を行う必要が生じたときは、文書の交付その他所定の方法により、変更後の通知事項を、速やかに、譲渡し、又は提供した相手方に通知するよう努めなければならない。
表示対象物及び通知対象物について事業者が行う調査等
事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、表示対象物及び通知対象物による危険性又は有害性等を調査しなければならない(リスクアセスメントの実施)。また、事業者は、当該調査の結果に基づいて、労働安全衛生法又は同法に基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
「労働安全衛生法又は同法に基づく命令の規定による措置を講ずることは、事業者の義務とされている。例えば、事業者は、リスクアセスメント対象物(リスクアセスメントを実施しなければならない表示対象物及び通知対象物をいい、以下同じ)を製造し、又は取り扱う事業場において、リスクアセスメントの結果等に基づき、労働者の健康障害を防止するため、代替物の使用、発散源を密閉する設備、局所排気装置又は全体換気装置の設置及び稼働、作業の方法の改善、有効な呼吸法保護具を使用させること等の必要な措置を講ずることにより、リスクアセスメント対象物に労働者がばく露される程度を最小限度にしなければならない。
また、事業者は、リスクアセスメント対象物のうち、一定程度のばく露に抑えることにより、労働者に健康障害を生ずるおそれがない物として厚生労働大臣が定める物(濃度基準値設定物質)を製造し、又は取り扱う業務(主として一般消費者の生活の用に供される製品に係るものを除く)を行う屋内作業場については、当該業務に従事する労働者がこれらの物にばく露される程度を、厚生労働大臣が定める濃度の基準以下としなければならない。
化学物質管理者・保護具着用管理責任者の選任
事業者は、次に掲げる事業場ごとに、化学物質管理者を選任し、その者に次に掲げる事項を管理させなければならない。
- リスクアセスメント対象物を製造し、又は取り扱う事業場:化学物質に係るリスクアセスメントの実施に関すること等の当該事業場における化学物質の管理に係る技術的事項
- リスクアセスメント対象物の譲渡又は提供を行う事業場(1を除く):当該事業場におけるラベル表示及びSDSの交付等による通知並びに教育管理による技術的事項
化学物質管理者を選任した事業者は、リスクアセスメントの結果に基づく措置として、労働者に保護具を使用させるときは、保護具着用管理責任者を選任し、有効な保護具の選択、保護具の保守管理その他保護具に係る業務を担当させなければならない。
化学物質管理者又は保護具着用管理責任者の選任については、それぞれその選任すべき事由が発生した日から14日以内に行うこととされ、事業者は、これらの者を選任したときは、その氏名を事業場の見やすい箇所に掲示すること等により関係労働者に周知させなければならない。
化学物質管理の改善指示
労働基準監督署長は、化学物質による労働災害が発生した、又はそのおそれがある事業場の事業者に対し、当該事業場において化学物質の管理が適切に行われていない疑いがあると認めるときは、当該事業場における化学物質の管理の状況について改善すべき旨を指示できる。
有害性の調査
「化学物質による労働者の健康障害を防止するため、既存の化学物質として政令で定める化学物質(厚生労働大臣によりその名称が公表された化学物質を含む)以外の化学物質(「新規化学物質」)を製造し、又は輸入しようとする事業者は、あらかじめ、厚生労働大臣の定める基準に従って有害性の調査(当該新規化学物質が労働者の健康に与える影響についての調査)を行い、当該新規化学物質の名称、有害性の調査の結果その他の事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。」
有害性の調査を行なった事業者は、その結果に基づいて、当該新規化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要な措置を速やかに講じなければならない。
公表等
「厚生労働大臣は、新規化学物質の名称、有害性の調査の結果その他の事項についての届出があった場合には、当該新規化学物質の名称を公表するもの」とされる。
厚生労働大臣は、当該届出があった場合、有害性の調査の結果について学識経験者の意見を聴き、当該届出に係る化学物質による労働者の健康障害を防止するため必要があると認めるときは、届出をした事業者に対し、施設又は設備の設置又は整備、保護具の備付けその他の措置を講ずべきことを勧告することができる。
調査の省略
次のいずれかに該当するときは、事業者は、有害性の調査を行わなくてもよい。
- 当該新規化学物質に関し、当該新規化学物質について予定されている製造又は取扱いの方法等からみて労働者が当該新規化学物質にさらされるおそれがない旨の厚生労働大臣の確認を受けたとき
- 当該新規化学物質に関し、既に得られている知見等に基づきがん原性がない旨の厚生労働大臣の確認を受けたとき
- 当該新規化学物質を試験研究のため製造し、又は輸入しようとするとき
- 当該新規化学物質が主として一般消費者の生活の用に供される製品として輸入される場合で、労働者が当該新規化学物質にさらされるおそれがないとき
- 当該新規化学物質について、一の事業場における1年間の製造量又は輸入量が、100kg以下である旨の厚生労働大臣の確認を受け、確認を受けたところに従って当該新規化学物質を製造し、又は輸入しようとするとき
前期1, 2, 5の確認を受けようとする者は、当該確認に基づき最初に新規化学物質を製造し、又は輸入する日の30日前までに申請書を厚生労働大臣に提出しなければならない。
届出を行なった事業者は、名称の公表前であっても新規化学物質を製造等することができる。